アメリカ

サンフランシスコで銃口を向けられたんだが

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アメリカのサンフランシスコを訪れた時のことです。

夜に外でちょっとお酒を飲もうと思い、フロントでどこか適当な店はないかと聞いたのですが、表通りは大丈夫だが、裏のストリートはおととい銃で撃たれた人がいるから行ってはダメだ、と言われました。

通りがひとつ違ったくらいでこっちは安全、向こうは危険だなんて、そんな簡単なものかなと思いつつ、表通りの店で軽く飲んでからホテルに戻ったのですが、帰路の途中でルームキーのとじ込みして部屋を出たことに気が付きました。

 

カードキーだったのですが、ソケットみたいなところにそれを差し込むと部屋の電気がつくやつで、それを差したまま外に出てしまったのです。

ホテルのフロントで、拙い英語で事情を説明すると「わかった。部屋の前で待っていろ」と言われたので、エレベーターに乗り、部屋の前にいると、しばらくして警備員の服を着た身長二メートル、体重百キロくらいありそうな体の大きい黒人が、くちゃくちゃガムを噛みながらやってきました。

「お前か?」と問われたので「そうだ」と答えると、人さし指を立てて「いいか」と念を押すようにします。

「部屋の中に入ったら、俺から見えるところにいろ。そしてすぐにIDカードを見せろ。いいか、すぐにだ」

私はIDカードってパスポートでいいんだよな、と思いながら「オーケー」と頷きました。

 

すると警備員はおもむろに拳銃を抜きました。

こちらは「え?」と思いながら心臓がドキリとします。

警備員はカードを差して鍵を開けると、身を隠しながらすうっと手だけを伸ばしてドアを開け放ち、何も言わずあごをしゃっくって、中に入れというように促しました。

私はこんなことでも銃を抜くのかと軽いパニックになりながら、かつて「フリーズ」という言葉を「プリーズ」と聞き違えて撃ち殺された日本人青年を思い出し、なんとなく大意だけつかめればいいやと、適当に聞き流していた警備員の言葉を、何か重大な聞き落としはなかったかと必死で思い出そうとしました。

 

まずは「すぐに」IDカードを見せるんだと気が付きましたが、パスポートは安全のために服の下に身に着けています。

しかし説明をせずに懐に手を入れるとか妙な動きをすれば撃たれるかもしれません。

ところがそれを説明する語彙が浮かんできません。焦って何とか単語をつなぎ、警備員の見えるところで大袈裟なくらいの動きでパスポートを取り出しました。

パスポートを確認すると、警備員は笑って「いい旅を」と言って帰っていきましたが、こちらは背中まで汗でびっしょりでした。

 

なるほど、アメリカは銃社会なんだなと、強く思った瞬間でもありました。

(53歳、男)

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